漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
9.
循環器系の疾患
文献
加藤典博, 加藤久仁之, 細井義行. ALTA (硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸) 硬
化 療 法 と 痔 核 結 紮 切 除 術 の 併 用 療 法 に お け る 乙 字 湯 の 効 果. 医 学 と 薬 学 2008; 60:
747-53. 医中誌 Web ID: 2009068979 MOL, MOL-Lib
1. 目的
痔核の最新治療であるALTA硬化療法への乙字湯の併用による臨床的有用性への評価
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験 (RCT)
3. セッティング
ふるだて加藤肛門科・外科クリニック、細井外科2施設
4. 参加者
2008年3月~9月に上記2施設で、Goligher分類III、IV度痔核で、ALTA 単独療法ある
いはALTA・LE (結紮切除術) 療法を実施した20名
5. 介入
Arm 1: ALTA 単独療法あるいはALTA ・LE (結紮切除術) 療法実施に加え施術翌日より
乙字湯 (3g) 、1日に2回、食前内服を4週間 10名
Arm 2: ALTA 単独療法あるいはALTA ・LE (結紮切除術) 療法 10名
両群とも疼痛時に非ステロイド性抗炎症剤NSAIDsを頓服として使用
6. 主なアウトカム評価項目
乙字湯投与1, 2および4週目に自発痛、排便時痛、血中CRP、術後2週目までの鎮痛
剤の使用
7. 主な結果
血中CRP値は投与1週目、排便時痛は投与2週目、自発痛は1, 2週目に、乙字湯投与
群では非投与群にくらべて有意 (P<0.05) な効果が観察された。鎮痛剤の使用率では、
非投与群の中央値が10錠であったのに対し乙字湯群では2錠であり、抑制傾向が認め
られた (P=0.09) 。ALTAによる硬結出現率、痔核縮小率では両群に差はなかったが、痔
核の硬結の残存期間は乙字湯投与群 (11.3週) が非投与群 (15.3週) に比べ、有意に短縮
していた (P<0.05) 。
8. 結論
痔核の最新治療であるALTA硬化療法、LE併用療法時の疼痛管理のひとつとして乙字
湯を用いることで、術後の自発痛、排便痛の抑制と持続する硬結の改善が認められる。
9. 漢方的考察
乙字湯の効果発現が一般的な漢方薬で謳われる緩徐なものではなく迅速なものである
ことが示された。便秘の抑制に関しては、大黄の瀉下効果と当帰の潤腸効果が主体と
考えられるが、術後の疼痛軽減作用への漢方医学的考察は本論文中には見当たらない。
10. 論文中の安全性評価
乙字湯による副作用発現は本研究では認められなかった。
11. Abstractorのコメント
罹患人口が多く、症例によっては激烈な症状を呈し、社会生活に大きな支障をきたす
痔核に対する最新の西洋医学的治療である ALTA 硬化療法に、痔核治療としては歴史
のある乙字湯を併用した際に、施術後の疼痛の軽減と硬結残存期間の短縮という明確
な効果を証明した論文であり、臨床的価値は高い。本研究は、痔核の治療に単独で効
果があることが古くから知られている乙字湯の現代最新医療との東西融合の可能性を
示したものであり今後の痔核治療の方向性に良い影響を与えると評価できる。
乙字湯は、無菌性炎症の抑制や組織障害を軽減するタンニン酸の作用を増強する効果
を有する可能性があり、今後の作用機序の解明に期待したい。
12. Abstractor and date
後山尚久 2010.6.1, 2013.12.31